がん診療について

がん治療について

放射線治療について

放射線治療は、患部に放射線を照射することで病気を治療する方法で、手術、薬物療法とならぶ『がんの3大治療法』の1つです。放射線治療は手術と同様に病気のある部分だけを治療します。手術と異なり体の組織を切る必要がないため臓器の機能を温存できます。からだへの負担が少ないので、高齢の方や合併症のために他の治療が難しい方でも治療を検討することができます。
放射線治療は様々な腫瘍の治療で用いられています。当院での過去3年間の原発部位別の新規患者数を下に示します。多くの種類の腫瘍で放射線治療が行われていることがわかります。
がんの根治を目的とした治療では放射線単独で行われる例よりも、放射線治療を手術療法・薬物療法と併用することが増えています。集学的治療といい、各々の治療法の持ち味を生かし、より治療効果を高めることができます。

また放射線治療はがんの根治治療のみではなく、痛みや出血などのがんによるつらい症状を緩和する手段としても用いられています。限局した部位にのみ放射線をあてることで副作用を抑えつつ症状緩和を行うことができます。二人に一人ががんと診断される時代ですが早期発見や治療法の進歩もあり、診断後の生存期間は延長しています。しかしその一方で骨やその他の臓器に転移を生じる方も増えています。効果的な症状緩和治療は生活の質を保つためには不可欠であり、大変重要です。当院では緩和的放射線治療も積極的に行っています。当院に通院中の方だけでなく、地域の病院や在宅医療を受けている方の治療にも対応しています。

原発部位別新規患者数
 2021年2020年2019年
脳腫瘍 11 3 2
耳鼻科腫瘍 38 32 45
食道腫瘍 14 13 11
肺腫瘍 80 86 86
乳腺腫瘍 73 89 82
肝胆膵腫瘍 5 12 10
胃小腸大腸腫瘍 15 18 18
婦人科腫瘍 27 17 18
泌尿器科腫瘍 62 71 80
血液系腫瘍 15 12 15
その他 4 9 0
放射線治療が効くわけ

放射線治療は、腫瘍細胞が正常の細胞より放射線に弱いことを利用して治療しています。少しの量の放射線を繰り返して患部に照射することで、腫瘍細胞は傷ついてやがて死んでいきますが、正常な細胞は放射線の傷を修復する力が強いので生き残ります。結果的に病気の部分は死滅しても、正常な部分はほとんどダメージを受けないで済みます。

放射線治療の治療回数・通院期間

放射線の効きやすさは病気の種類によっても異なりますので必要な放射線の量も病気により違います。根治的治療では5~7週間、週5日間を治療にあてることが多いです。少しずつ治療するため日数はかかりますが一回の治療時間は10分程度です。 最近は安全性の確認できた分野ではより短い治療期間での放射線治療も行われるようになり、通院の負担も減ってきました。例えば乳がん術後放射線治療は以前は25回治療でしたが、現在は16回治療が主流となっています。また症状緩和を目的とした治療では放射線の量を調整することで1~2週間程度で行うことが一般的です。特に骨転移による疼痛を和らげる場合は治療回数1回での単回照射も行っています。

新規放射線治療機器導入について

当院では2021年11月に新たに放射線治療機器1台を稼働させました。より多くの患者様の治療が可能となり、放射線治療開始までの待機期間も短くなりました。高精度放射線遅漏も可能となりました。

新しく導入された放射線治療装置「TrueBeam」の特徴
迅速で正確な位置合わせが可能
今回導入された放射線治療装置は放射線治療を行う高エネルギー放射線を出すガントリに加えて、X 線検査で用いられるX線管と検出器が搭載されています(下の写真)。これにより、従来の装置よりも撮影する画像が見やすくなり、細かい位置合わせが早く正確にできるようになりました。

高度な放射線治療に対応
この装置は、放射線の形を決めるMLC8(マルチリーフコリメータ)と呼ばれる部分の位置精度や移動速 度の正確性が高いため、ガントリを回転しながら連続的に放射線を当てることが可能です。患者さんの体を固定して小さながんにピンポイントで放射線を当てる「定位放射線治療」や、放射線を当てる 形状や出力を細かく変えながら照射をする「強度変調放射線治療」にも適合しています。これらの治療法 は病気の組織にはより多くの放射線を当てることができ、周囲の正常な組織にあたる放射線の量は少な くすることができます。
中でも「ハイパーアーク」という頭(脳)の治療に特化した技術は、1回の治療で脳内の複数の部分に放射 線を当てることが可能です。そのため、従来では全脳照射といって脳全体に放射線を当てて治療していた症例でも部分的な治療が可能となり、放射線治療による副作用をより少なくすることが期待できます。

室内環境にも配慮
新しい放射線治療室は天井に青空のパネルが入っています。放射線治療は始まると毎日通っていただくことになるので、患者さんにはリラックスして治療を受けていただける環境となっています。

イメージ図 truebeam