循環器内科

循環器内科について

特色

虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心不全、弁膜症、肺塞栓症、下肢動脈硬化症、不整脈、先天性心疾患などすべての循環器疾患に対して質の高い医療を提供出来る診療体制を整えています。とくに心臓救急疾患については、当院が宇都宮医療圏唯一の救命救急センターであることから、常に迅速で高度な医療が実践できるようスタッフ一同24時間体制で努力を続けています。

専門的取組
心臓カテーテルセンター

カテーテルとは手首や足の付け根の血管から挿入して、心臓や全身の血管の検査や治療を行うための医療用チューブのことです。心機能や循環動態の評価、弁膜症の手術適応の決定に必須である他、狭心症、心筋梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症など血管が狭窄、閉塞する疾患に対しては、カテーテル越しに血管を拡張する手術が可能であり、非常に威力を発揮します。患者さんの負担も小さく済むため、現代の循環器医療に欠かせないツールとなっています。

当院の心臓カテーテルセンターの2021年度の手術件数は709件と関東全域で12位、全国で28位、栃木県内では最多でした。この後で挙げる特徴から県内外の他の病院からもご紹介が増えており、2023年度は868件の手術を実施しました。手術件数が多い病院は手術に慣れているため技術が高い病院が多いですが、残念ながら中には手術の必要性(適応)が十分に吟味されないままに手術を行う病院もあります。そのような背景の中で当院では、治療に向かうステップの中で以下のような特徴があります。

  1. FFRct; 手術の必要性(適応)を吟味するための最新鋭の検査がある
    当院では、手術の必要性を吟味するための新しい心臓の検査であるFFRctを栃木県で初めて導入し、2024年1月現在でこの検査が行える唯一の病院です。FFRctについてはこちら

  2. ステント留置などを必要最小限に留め治療する
    異物であるステントは必要以上に多い本数や長く留置をすると血栓ができて命に関わることがあます(ステント血栓症)。これを防ぐためには治療箇所の吟味を慎重に行い、最小限の治療で済ませることが患者様に最善であることが証明されています。血管が狭い(狭窄)がある部分すべてで血液の流れが滞っているとは限りません。治療の際には圧力センサーがついているワイヤーを用いて冠動脈の中の圧力を測定します。例えば冠動脈が見た目にはどこもかしこも狭い場合も、このような測定を丁寧に行うことでステント留置を最小限にとどめ血栓症リスクを最小限にする努力をしています。 図は胸が苦しくなる症状があった方の冠動脈です。プレッシャーワイヤーを用いると図のように、血液が強く滞っている箇所に多くの点が表示されます。この部位に最小限のステントを留置して治療を終了すると0.71という値が0.92に十分に改善することがステント留置前に予測することができました。ステント留置は最小限にとどめ(赤い矢印)手術後には症状は消失しました。このシステムは県内で当院が現在最も多く使用しており、これによってステントで血管内を埋め尽くしてしまうことなく血管を温存する治療を可能にしています。

    イメージ図 ステント留置

  3. 難易度の高い手術が多い
    特に難易度が高いとされる以下のような治療も県内随一の件数で積極的に行っており、他院で治療に難渋している症例も、当院で治療を完遂する患者さんが多くいらっしゃいます。

    ①分岐部病変
    血管が枝分かれしている部位は分岐部とよばれ、プラーク(青矢印)を処理せずにステントを留置すると、図のように枝分かれした血管の入口が狭くなることが多く(カリーナシフト現象;赤い矢印)、このため難易度が高いとされています。

    イメージ図 病変部を削る

    この現象を予防するべく方向性粥腫切除術(DCA)とよばれる道具が使用されます。図のように①②DCA(赤矢印で示されている道具)による切削を経て③のステント留置に進めば枝分かれした血管の入口が狭くなることを防げます。

    イメージ図 病変部を削る

    特に左主幹部とよばれる部位、すなわち3本の冠動脈のうち左前下行枝とよばれる大きな血管と回旋枝とよばれる大きな枝分かれの血管の分岐部で非常に重要な部位です。この部位の病変は一般的に胸を開く手術に回ることも少なくありません。当院ではこうした道具を用いながらカテーテル治療でこの部位の治療を数多く完遂しています。 当院はDCAの38件(2023/1-12)で手術件数県内1位です。また当院心臓カテーテルセンター長の下地顕一郎医師は県内唯一、全国でも21名のDCA指導医のうちの一人であり、この技術の普及につとめています。

    ②石灰化病変
    血管が石のように固くなってしまう石灰化によって、風船やステントでは血管が広がらない場合があります。このような病変に対しては現在以下の3つの治療方法がありますが、当院ではそのすべてが使用可能です。「適材適所」にこれらの道具を使い分けることが効果的かつ安全な治療には必須です。特に1.回転式冠動脈アテレクトミーと2.ダイアモンドバックは、図のようにそれぞれ先端、側面のドリルが高速回転をすることで厚い石灰化病変を薄くしますが、その一方で合併症を防ぐためには丁寧な操作はもちろん石灰化の広がりやワイヤーどの位置関係などを画像所見から正確に理解して戦略をたてる必要があります。当院では血管内超音波、光干渉断層法のような画像を用いて十分に吟味し安全性と効果を見極めてこの方法で治療を行っています。

    回転式冠動脈アテレクトミー(rotablator)
    2023年度当院では県内1位の104件の件数を施行しております。また、当院心臓カテーテルセンター長の下地顕一郎医師は県内3名のrotablator指導医のうちの一人であり、この技術においても普及につとめています

    イメージ図 回転式冠動脈アテレクトミー

    ダイアモンドバック (OAS)
    この手技も当院では累積140件(2024年1月現在)の件数を施行しております。

    イメージ図 ダイアモンドバック

    ショックウエーブ(IVL)
    図のようにバルーンから衝撃波を照射して厚い石灰化病変に亀裂を入れ、これによって通常のバルーンが拡張しやすくする道具です。上記2つの方法と異なり石灰化を削ること(切削)をしないため石灰の体積を減らすことはできませんが、その分「削りかす」を血管内に生じることがないため、血流が悪くなるリスクは低い治療です、心機能の低下などの理由で、上記2つの方法のリスクが高い患者さまにも安全に施行できます。 こちらの治療法においても県内で1位の件数(32件、2023年度)を行っています。

    イメージ図 ショックウエーブ

    ③慢性完全閉塞性病変(CTO)
    心臓を養う冠動脈が詰まってしまってから3か月以上たってしまった病変を指します。病変が硬くなってしまっているためワイヤーを通過させることが困難であり、カテーテルで治療を行うことが非常に困難な病変として知られています。 当院では逆行性のワイヤー通過や血管内超音波を用いてワイヤーを誘導するなど最新のテクニックを用いて90%前後の高い成功率を達成しています。 当院はCTOの手術件数においても県内1位です。また当院心臓カテーテルセンター長の下地顕一郎医師は県内唯一の日本慢性完全閉塞インターベンション会議認定術者です。認定術者リスト
    この技術の分野でもその普及につとめており、このような背景から他院でうまくいかなかった病変をご依頼され治療を完遂する患者さまも多くいらっしゃいます。


これらの複雑なカテーテル手術を行う際には状態が悪くなった際に心臓を補助する道具や、技術の高い心臓血管外科のバックアップが必要不可欠です。 当院では万が一手術中に心臓の機能が低下した際もその機能を肩代わりする、県内で3つの病院しか保有しない「インペラ」も保有しています。また、技術の高い心臓血管外科もこれらの難手術をサポートしています。このような体制から、他の病院で胸を開く手術が必要といわれた多くの患者さまがセカンドオピニオンでご紹介いただきカテーテル治療で治療を完遂しております。しかしやはりカテーテル治療によるリスクが高いと判断された場合には、心臓血管外科と密な連携をもって胸を開く手術に回っていただくこともあります。


経カテーテル大動脈弁留置術~TAVI~

TAVIについてはこちらをご覧ください。 → 記事のページはこちら

その他

紹介状を持参される患者さんや、内科外来受付における問診などで循環器疾患が強く疑われる患者さんは、初診から専門医が診察します。紹介状により診察医をご指定下されば、その医師が担当いたします。症状により入院または必要な検査の予約をしていただきます。御紹介いただいた先生にはお手紙で診察医から検査結果および治療方針をご報告します。入院が必要となった場合には病棟担当医からその経過を随時ご連絡させていただきます。なお、病診連携を通した予約初診制度もありますのでご利用下さい。