がん診療について

がん治療について

子宮頸がん
予宮がんとは

子宮には入口付近の「子宮頸部」と、赤ちゃんが育つ部分である「子宮体部」と2つの部位があります。前者にできるがんは「子宮頸がん」後者にできるがんは「子宮体がん」といいます。この2種類のがんは同じ子宮がんでも、原因や発症しやすい年齢・特徴・治療法が異なります。

 

子宮頸がんの特徴

イメージ図 子宮頸がん子宮頸がんは性交経験のある女性であれば誰でもなる可能性がある病気です。日本人全体では年間約15,000人が発症し約3,500人が死亡しています。
近年では若い女性の発症率が増加傾向にあり、20~39歳の女性においては、発症するすべてのがんの中で第1位となっています。予宮頸がんの主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染であることが明らかになっています。HPVは性交渉によって感染し、全女性の約80%が生涯のうちに一度は感染するといわれておりますが、感染をおこしてもほとんどは自然に排除されます。しかし感染が持続した場合のごくわずか(約0.15%)に予宮頸がんを発症するのです。

イメージ図 子宮頸がん・体がん患者の典型例
子宮頸がんの症状

子宮頸がんは初期の段階においては無症状であるとが多く、自分では気づくことが難しいがんです。進行してくると不正性器出血、性交後出血、おりもの(帯下)の異常、下腹部や腰の痛みなどが出現してきます。このため、症状がない段階での検査が重要になってきます。


子宮頸がんの検査

子宮頸がんは定期的な検診を受けることにより、がんになる前の状態(前がん病変)を発見することができ、がんになる前に治療が可能な病気です。検査は細胞診と内診が行われています。
細胞診にて精密検査が必要と診断された場合には、婦人科にてコルポスコピー診(膣拡大鏡診)で子宮膣部の状態をさらに詳しく観察したり、コルポスコピー診で異常のみられた部分から組織を採取(組織診断)し、詳しい診断が行われます。
※細胞診・・・内診台にあがり膣鏡にて子宮頸部の状態を観察した後に、綿棒や柔らかいブラシなどを用いて子宮頸部の粘膜をこすり細胞を採取します。横査後、少量の出血があることがありますが、検査自体の痛みはほとんどありません。細胞診は自治体で実施している住民検診や職場の健康診断、人間ドックなどで行うことができます。


予宮頸がんの治療

イメージ図 円錐切除術の切り取り部位予宮頸がんの治療には主に手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤)があり、がんの進行具合や年齢、合併症の有無などを考慮して治療法が決定されます。進行期にはがん細胞が子宮粘膜にとどまっている0期(上皮内がん)から子宮の周りの臓器や他の臓器にまで転移があるⅣ期まで段階によって分類されています。0期またはIa1期までのごく初期のがんでは、子宮頸部の一部を切り取る手術(円錐切除術)を行います。円錐切除術は子宮頸部をレーザーや高周波メス等で円錐状に切り取る手術であり、子宮を摘出しないため、術後に妊娠・出産が可能です。ただし、円錐切除術で切り取った組織を詳しく検査した結果、進行した子宮頸がんであることが分かる場合があり、子宮摘出などの治療が追加されることもあります。がんが子宮頸部の上皮を超えて広がっている場合には、原則子宮の摘出術が行われ、Ib期以降では広汎子宮全摘術(子宮と周辺の靭帯組織や骨盤内のリンパ節の摘出)が行われます。また患者さんの状態によって放射線治療や化学療法、化学放射線同時併用療法などが行われます。

イメージ図 子宮頸がんになるまで
イメージ図 子宮頸がんの進行と病期
予宮頸がんの予防

子宮頸がんの予防として現在ワクチンが注目されています。原因ウイルスであるHPVのうち特に原因として多いとされている16型・18型の感染を防ぐワクチンが2009年に日本でも承認され、接種できるようになりました。ワクチンの接種によってこれらのウイルスから長期にわたって感染を予防することが可能です。しかしこのワクチンはすでに感染しているHPVを排除したり、子宮頸部の前がん病変やがん自体を治す効果はありません。
また、すべての予宮頸がんを起こす可能性のあるHPVの感染を防ぐことはできません。子宮頸がんの予防にはワクチンの接種だけではなく、やはり定期的な検診を受けることによって早期発見、早期治療を行うことが大切です。


おわりに

婦人科の検診や受診は「恥ずかしいから行きたくない」「症状がないから大文夫」などと考えて、ついついおっくうになってしまいがちです。事実、日本の子宮頸がん検診の受診率は全体で約20%であり、他の先進諸国と比べると非常に低いのが現状です。しかし、子宮頸がんは予防や早期発見・治療により高い確率で完治するごとが可能ながんです。みなさん、症状がなくても定期的な検査を是非受けてください。

グラフ 子宮頸がんの罹患率と死亡率(日本人女性)
グラフ 日本における20~39歳女性 10万人当たりの各種がんの発症率推移
グラフ 先進国の子宮頸がん検診受診率

※このページの記事は、院外報「みやのわ」No.30 2011年1月冬号 の内容を元に、2018年12月に内容を更新、2023年1月に内容を確認し掲載しています。