チーム医療のご案内

クリニカルパス

クリニカルパスとは・・・

クリニカルパスとは、ある病気の治療や検査に対して、標準化された患者さんのスケジュールを表にまとめたもので、1つの治療や検査ごとに1つずつ作られています。 クリニカルパスには、病院用(診療用)、患者さん用と2つ準備されており、患者さん用クリニカルパスには、患者さんが入院してからの食事や処置、検査・治療、そのための準備、 退院後の説明等が日ごとに詳しく説明されているものです。

クリニカルパスのパス作成・活用・改訂セミナーも開催しています
クリニカルパスを患者さんにお渡しするのはなぜ?

クリニカルパスには、患者さんの入院後のスケジュールが詳しく記されています。 手術の後、いつからお風呂に入れるの?点滴はいつはずせるの?といった基本的な入院中の生活がわかりやすく書かれていますので、入院生活をスムーズに進めていただくためです。 なお、クリニカルパスがまだ作成されていない病気や検査もあります。また、患者さんの状態によっては標準的なスケジュールと異なる場合がございますので、 お渡ししないこともあります。

当院のクリニカルパスの目標
医療を標準化する

医療の標準化とは、病気に対し科学的根拠に基づいた処置や治療を、一定の質を保ちながら行うことです。クリニカルパスを使用することにより、科学的根拠に基づいた治療ができ、無駄な検査や投薬を減らすことも可能です。

情報を共有化しチーム医療を実現する

当院のクリニカルパスは医師,看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、栄養士、事務員など多職種にて作成されています。そのため、できあがったクリニカルパスは、各専門分野からの意見を元に科学的根拠に基づき作成されています。

患者さん、ご家族への説明用紙として問題点を共有する

クリニカルパスをお渡しすることにより、患者さんには入院中のスケジュールを把握すること ができ、より安心して治療や検査を受けていただけると考えています。しかし、病気のことや検査、手術については医師から詳しくご説明させていただきます。分からないこと、ご心配なことがありましたら、遠慮なく医師、看護師にお尋ねください。

医療を効率化する

クリニカルパスを使用することで、不必要な検査や投薬などを減らすこともでき、 入院(在院)日数の短縮も可能で、コスト削減につながります。

医療安全(リスクマネジメン)の推進に役立ちます

病院用(診療用)のクリニカルパスは、検査・処置・治療のオーダー内容や、看護ケアの内容 を複数の医療スタッフが確認するため、指示もれやチェックもれの防止に役立ちます。これらの実現で、患者さんは適切な医療を効率的に受けることができます。また、クリニカルパスは、医療スタッフによって定期的に見直されて改善されるので、質の高い安全な医療を確保することもできます。

クリニカルパスは誰が作るの?

写真 クリニカルパス作成クリニカルパスとは、患者さんを中心としたチーム医療を推進するために欠かせないツール(道具)です。チームで医療を進めるには、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、栄養士、事務員理学療法士、作業療法士などたくさんの職種が関わります。様々な職種が患者さんのことを考え、より良い医療を考えることで、クリニカルパスができていきます。

クリニカルパスには様々な職種が関わっています
医師の関わり

作成、運用の責任者です。今までの経験や治療実績、参考資料等を基に治療の方針や入院期間等を明確にします。

看護師の関わり

写真 クリニカルパス患者説明先述したそれぞれの専門家が意見を出し合い、 その中で看護師は、患者さんの代弁者となって関わります。コーディネーターの役割も担ってい ます。患者さんの最も側にいるのは看護師です。 患者さんにより理解して頂けるよう、クリニカルパスに基づいて詳しく説明いたします。患者さんやご家族にご理解いただけるように、なるべく分かり やすい言葉で説明するよう心がけています。 また細かな観察や対応を常に考えています。

事務員の関わり

診療に関する不安を解消することは出来ませんが、入院費用等の計算や手続き等を担当しています。当院の入院費用は、診療行為ごとに計算する「出来高払い方式」とは異なり、 入院患者さんの病名や症状をもとに、手術などの診療行為の有無に応じて決定される診断群分類(DPC)による「定額払い方式」で算出しています。そのため、クリニカルパスにより標準 的な治療が行われる場合、病名・入院日数・手術の有無および術式などが事前にわかり、クリニカルパスに応じたおおよその入院費用の概算についてお答えすることができます。 ただし、当初の計画通りに治療が進む方ばかりでなく、予期しない合併症が出現してしまう方や持病の悪化などにより診療内容が変化する方もいらっしゃいます。また、複数のパスを組み合わせて治療を進める方などもおられるため、一律に判断できない場合があります。さらに薬剤や診療材料によってもご請求額が変わってくることもあります。

臨床検査技師・診療放射線技師の関わり

診療を進める際には、採血やレントゲン撮影をはじめ種々の検査があります。その検査の必要性や実施回数、内容等を専門的立場から考え関わります。回数が多ければ「安心」という訳ではなく、患者さんのお身体への負担を最小限にして、より効果的な方法を考えています。

栄養士の関わり

病院では、食事も治療の一つです。栄養士は、患者さんの病気やクリニカルパスの種類に合わせて、最適な治療食が提供できるよう関わります。特に糖尿病の食事療法や、抗がん剤による化学療法で食事が進まない患者さんには、個別にきめ細やかな対応を心掛けています。

薬剤師の関わり

投与される薬の選択と管理・指導等を行います。

    • お薬(内服薬、外用薬、注射)の副作用の症状についての説明をし、症状や検査値を確認して、副作用の確認をします。
    • 健康食品や市販の薬の使用状況を確認して、治療を行っていく上で問題がないか(飲み合わせ等)確認します。
イメージ図 クリニカルパス
  • 薬の選択について入院治療において薬は不可欠です。特に手術のクリニカルパスについては、感染の予防のための抗生剤の点滴や、手術後の痛み止めなどが投与されます。クリニカルパスで標準化する薬剤の選択にはEBM(evidence-based medicine:根拠に基づいた医療)を基に行います。EBMでは、あいまいな経験や直感に頼らず、科学的な根拠に基づいて最適な医療・治療を選択し実践することが重要です。これらのことをふまえて薬剤師は医師へ薬の提言をしていきます。
クリニカルパスが目指すもの!!

日本の医療界でクリニカルパスなるものを耳にするようになったのは、約10年前のことです。その頃は、たとえ疾患が同じ患者さんでも、同じように治療することは難しいだろうということで、なかなか理解が得られませんでした。同じ疾患であれば、患者さんが異なっても、また治療する医師が異なっても、期待できる結果は変わらないはずです。しかし、細かい違いに気を取られ、自分のやり方にこだわり、本道を見極められない医師たちがなかなかクリニカルパスの導入に踏み切れずにいました。約10年が経過した現在、クリニカルパスを導入していない病院はないと言っていいほど、普通に使用されるようになっています。この10年間で変化したことは、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、栄養士、事務員などの、治療にかかわる多くの人たちが 話し合い、標準的な治療というのが何であるかを、それぞれの病院で検討してきたことです。そして、それぞれの病院で作り上げた標準を、更に全国学会を通し、学術的な証拠(エビデンス)と照らし合わせて、全国的な標準であるクリニカルパスを築きあげました。今後もなお、新しい治験や研究から新しい証拠(エビデンス)が生まれ、それによって日本全国の医療機関で使用可能なクリニカルパスが進化していくと考えられます。クリニカルパスを進化させることで、治療を受ける患者さん側に立った、安全で分かりやすい標準的な治療が今後も生まれてくることでしょう。