大動脈センター

大動脈解離

急性大動脈解離とは?

大動脈の壁は通常約2mmほどの厚さがありますが、内膜、中膜、外膜の三層構造になっています。
その壁の内膜に突然亀裂が入り裂けて、そこに血液が入り込み大動脈の走行に平行して血管が剥がれ(解離する)、二腔構造になってしまう病気です。
大動脈壁が薄くなり、外膜が破けると破裂を起こし、高率に死に至ります。
また裂ける部位によって、そこから枝分かれしている血管が狭窄や閉塞を起こし様々な合併症(心筋梗塞、脳梗塞、下肢虚血等)を引き起こす非常に重篤な病気です。

原因は?

高血圧が原因であることが多く、高血圧を指摘されている人は注意が必要です。またマルファン症候群は大動脈解離を高率に合併することが知られている疾患です。

症状は?

ある時突然、激烈な胸や背中の痛みを伴って発症することが特徴です。突然発症し、大動脈破裂を合併すると突然死を引き起こ可能性があります。

治療は?

血管が裂けている場所により治療方針が大きく異なります。
心臓や頸動脈(脳に向かう血管)の近くの上行大動脈が解離を起こす(A型解離と言います)と、放置すると生命を脅かす危険性が高いため、緊急手術の適応になります。

一方背中から腰の方の大動脈(胸部下行大動脈から腹部大動脈)が解離を起こした場合(B型解離と言います)、一般的に外科的手術療法ではなく、薬剤投与による厳重な血圧コントロールを行い、解離の状態が安定するのを待ちます。安定するまで約二週間ほどかかります。

 

外科的手術

解離の原因となった、内膜の裂け目がどこにあるかで手術方法が異なります(通常は上行大動脈か弓部大動脈にあります)が、基本的には裂け目を切除して、人工血管で置き換えます。手術は全身麻酔で行います。
心停止や脳循環を一時的に止めなければならないため、全身を低体温にして、臓器障害が起こりにくい状態にして手術を行います。人工心肺を使用して補助循環を行います。

また、当院では急性期手術治療もさることながら、その後の遠隔期成績についても重要視しております。
急性大動脈解離の手術を無事乗り越えることができても、数年後に残存解離部分の拡大が進行し、やはり破裂の危険性が高まってしまい手術治療が必要になることが多々あります。その場合、初回手術が従来の上行大動脈置換術では、2度目の手術は人工心肺を使用した再開胸手術となり非常にハイリスクな手術となってしまいます。しかし現在はステントグラフト治療(折りたたまれた人工血管を大動脈内で展開する、身体への負担の少ないカテーテル手術)が確立され、それを使用することで2度目以降の手術も再胸開手術ではなく、カテーテルによる低侵襲治療で行うことが可能となっております。

当院ではそれを見越して、初回の緊急手術の際に上行大動脈置換術に加え弓部大動脈を部分的に置換することで、2度目以降の追加手術の負担を少なくする方針としております。
これにより、急性大動脈解離の救命だけでなく、退院後の長期的な予後の安定を得ることができております。裂けてしまった血管はほとんどの場合時間経過とともに膨らんでくるため、ステントグラフトを用いて修復することで、通常であればその後に待ち受ける負担の大きな手術を回避することが可能となります。

初回手術を上行大動脈置換術のみで終了した場合の、残存解離部の瘤化

この場合の治療は再開胸による人工心肺使用下の人工血管置換術となり、非常にハイリスクで負担の大きな手術となってしまいます。

 

カテーテル治療例(A)カテーテル治療例(A)

 初回手術後       追加治療後

 

治療例(B)治療例(B)

 初回手術後       追加治療後

このように、裂けてしまった残りの部分をステントグラフトで修復することで、遠隔期の拡大を防ぎ再開胸手術を回避することが可能となります。カテーテル手術なので手術自体の負担は人工心肺を使用した再開胸手術に比べると非常に少ないものになります。

 

慢性大動脈解離

一般に大動脈解離を発症してから2週間を急性期、それ以降は慢性期と分類されます。(発症2週間から2,3カ月を亜急性期と呼ばれることもあります)
慢性期の場合は、急性期の様な重篤な合併症がおこることは比較的まれですが、大動脈解離部が瘤化(コブのようになる)する可能性があるため、定期的な画像検査が必要です。瘤が大きくなってくると破裂の危険性が高まるために、手術が必要です。手術は大動脈瘤に準じます。数年前より、ステントグラフトによる治療も一部の患者さんで可能となってきました。