がん診療について
がん治療について
放射線治療について
がんは1980年以降本邦の死因の第1位となり、その後2015年には年間37万人ががんで亡くなっています。がん患者数は年々増加の一途をたどっています。この影響を受け、放射線治療を受ける方も急激に増加し、過去10年間で2倍以上に増えています。2012年には新規に放射線治療を受けた方は推定21万3千人にもなっています。しかし、まだ一般の方にはなじみがうすく、放射線治療について『なんとなく怖い』『副作用が心配』などの声を聞くこともあります。放射線治療を受ける方やご家族が少しでも不安なく治療を開始できるように、これまでに患者さんから寄せられた質問にお答えする形で放射線治療についてお話します。
放射線治療についてのご質問にお答えします
放射線治療はどんな治療ですか?
放射線を病巣にあてることにより、がん細胞を徐々に死滅させる治療です。副作用が出にくいように毎日少しずつ放射線を当てます。
放射線治療のイメージ正常な細胞は放射線に抵抗力があるので、ダメージを受けにくくなっています。
※青い風船=がん細胞
赤い風船=正常な細胞
治療は何回くらい行いますか?
1日1 回の治療を10回~30回くらい繰り返します(個人差があります)。土曜、日曜は休みになります。
治療時間はどれくらいですか?
放射線があたるのは何十秒かです。治療室に入ってから出るまで、5~15分くらいの場合が多いです(個人差があります)。
治療中生活の制限はありますか?
特にありませんが、極端に疲れることは避けて下さい。お仕事を続けながら放射線治療を受けている方もたくさんいらっしゃいます。 家事も普通に行えます。
食事で注意することはありますか?
バランスのよい食事を心がけて下さい。口内炎や下痢等が生じた場合は刺激物は避けて下さい。治療部位により若干注意事頂が変わりますので、詳しくはスタッフにお尋ね下さい。 ビタミンA とビタミンC を大量に摂ることは放射線治療の効果を下げる可能性があるといわれています。サプリメントの服用は、治療申は避けて下さい。
副作用についてのご質問にお答えします
髪が抜けますか?
頭部の治療以外では抜けません。たとえば乳がんや前立腺がんの治療で脱毛がおきることはありません。
皮膚が火傷のようになりますか?
最近の放射線治療では皮膚への影響は少なくなっています。首の治療などでは、赤くなったり皮がむけることもありますが、治療後には治ります。
その他の治療中の副作用はどんなものがありますか?
治療部位 | 症状 |
口・のど | 口内炎・声のかすれ |
食道 | ものを飲みこむ時の痛み |
肺 | せき・肺炎 |
おなか | 下痢 |
下腹部 | 頻尿・排尿時の痛み |
吐き気は強くでますか?
吐き気が生じることはまれです。治療開始から数日だけすっきりしない程度の症状が出る人もいます。
放射線で効果のあるがんは?
放射線は多くのがんに育効です。右図に示した以外にも放射線治療が行われるがんもあります。胃がん・大腸がんは、多くの放射線をあてると臓器に穴があく危険があるので一般には適しません。
ご自分や身内の方のがんに放射線が有効かどうかは、放射線治療を専門に行う医師に確かめてください。
放射線治療のながれ
1 | 治療前診察 治療方針の決定 |
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2 | CT検査 治療計画の決定 |
3 | 放射線治療 治療中診察 |
4 | 治療後定期診察 |
放射線治療の一例
指の間の皮膚がんです。患者さんのご協力をいただき、放射線治療でどのように病気が治るかを記録しました。
切らずに治す放射線による治療経過をご覧ください。
左手の指の治療前の状態です。
手に描かれた線は、放射線を正確に当てるためのしるしです。
放射線治療後半です。
赤い部分はほぼなくなっています。
治療終了後3か月です。
皮膚は正常になり、どこに病気があったかわかりません。動きにも問題はありません。
おわりに
放射線治療は治療装置の進歩も目覚しく、以前に比較すると治療期間も短く、副作用もより抑えられるようになってきました。
病気の種類により、またその部位により、放射線治療の効果や体に及ぶ影響はお一人お一人異なります。
放射線治療に関する疑問点、心配なことなどありましたら放射線治療専門医あるいはがん相談支援センターにご相談ください。
※このページの記事は、院外報「みやのわ」No.24 2009年7月夏号 の内容を元に、2018年12月に内容を更新しています。