耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科について

科の特色

当科は一般には「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」と呼ばれ、頭頚部領域の手術を中心に耳・鼻・舌口腔・咽喉頭(のど)・唾液腺・頸部の病気を専門にしている科です。当科は地域基幹病院の耳鼻咽喉科として、精密検査や専門治療が必要な患者さん、入院を必要とする患者さん、主に手術を必要とする患者さんを中心に診療を行っております。
そのため、初診の患者さんにつきましては、完全紹介制とさせていただきます。まず診療所等を受診いただき、初期診断を受け、紹介状を持参していただきますようお願いいたします。

当院は事業方針のひとつに「高度専門医療の提供」を掲げていますが、当科で提供している専門医療に機能改善手術・頭頸部腫瘍(癌)治療があります。いずれも聞き慣れない言葉だと思いますので、以下で説明いたします。

1.機能改善手術

我々が専門としている領域には、生活する上でなくてはならない機能がたくさんあります。聞くこと(聴覚)、におい(嗅覚)、あじ(味覚)、話すこと(発声)、食べること(嚥下:舌・口腔から咽頭まで)、呼吸をすること(上気道:鼻から喉頭まで)など、生きていく上でもしくは生活を楽しむ上でなくてはならない機能ばかりです。病気をして機能が悪くなった場合、改善が難しい機能もありますが、手術などの治療によって改善することもあります。当科で行っている機能を改善させる手術には以下のようなものがあります。

a. 聞こえを良くする手術(耳の手術)
 鼓室形成術・鼓室形成術(慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎など)
 アブミ骨手術(耳硬化症など)
 人工内耳手術、鼓膜チューブ留置術(滲出性中耳炎など)
b. 声を良くする手術(人工材料留置術・声帯の手術)
 喉頭顕微鏡下手術(声帯ポリープや声帯結節など)
 喉頭枠組み手術(声帯移動手術など)
c. 鼻の通りや機能をよくする手術(鼻の手術)
 内視鏡下副鼻腔手術(慢性副鼻腔炎など)
 鼻中隔矯正術(鼻中隔弯曲症)
 レーザー手術(アレルギー性鼻炎など)など
d. いびきや睡眠時無呼吸を改善させる手術(のどの手術)
 口蓋扁桃摘出術
 アデノイド切除術
 レーザーによるいびき改善手術
 口蓋垂軟口蓋咽頭形成術など
e. 繰り返す扁桃炎を予防する手術(のどの手術)
 口蓋扁桃摘出術
f. 食事の飲み込みを改善する手術(のどの手術)
 嚥下機能改善手術

特に聞こえをよくする手術(鼓室形成術・アブミ骨手術・人工内耳手術など)には力を入れております。鼓室形成術については、耳の状態に応じて手術方法を工夫し、また内視鏡などの先端機器を利用するなど、治療成績の向上に努めております。人工内耳手術は補聴器を使用してもことばの聞き取りが不十分な難聴の方に行います。先天性難聴のお子さんにも聴覚活用・言語発達のために人工内耳手術を行うこともあります。

2.頭頸部腫瘍

耳鼻咽喉科で取り扱う腫瘍は頭頸部腫瘍で、鎖骨(さこつ)から上の脳、眼球、脊椎を除いたすべてが対象となります。具体的には舌・口腔、咽頭、喉頭、耳、鼻・副鼻腔、甲状腺、副甲状腺、唾液腺(耳下腺・顎下腺など)、頭蓋底の良性腫瘍または悪性腫瘍が対象となります。これらの部位は咀嚼、嚥下、発声、構音、呼吸、嗅覚、味覚、聴覚など重要な機能をもつ部位であり、治療による機能障害を縮小させることが重要な課題です。当科の治療方針としては、治療成績を落とすことなく可能な限り機能障害を残さない治療を行っています。初期の癌では放射線治療や小範囲の切除を行います。また進行癌でも最新の化学療法を治療に組み合わせることにより、従来は手術でないと根治できなかった癌に対し、可能な限り手術を回避または縮小し機能を温存することを目指した治療を行っています。

手術について

手術決定にあたり、手術以外の治療(薬の治療など)で改善する可能性が少しでもあれば、まず手術より先にその治療を行い、うまく改善しない場合は手術を検討します。手術を行う場合も、手術の方法・改善する可能性・手術を行った場合の危険性(合併症)などを、患者さん本人と家族の方に詳しく説明し、同意のあった場合に初めて手術となります。 手術は短期入院(1週間程度)で行っていますが、患者さんの要望により適宜短縮しており、手術によっては日帰り手術を施行して、忙しい患者さんのニーズにこたえています。

年間の手術件数は多く、県内の病院の中でもトップクラスと思われます。当科で特に専門としている手術には、
耳科手術(鼓室形成術・人工内耳手術・アブミ骨手術など)
頭頸部癌手術(喉頭癌、下咽頭癌、中咽頭癌、舌癌・口腔癌、副鼻腔癌など)があります。
また、
甲状腺手術副甲状腺手術
上皮小体手術、耳下腺手術
顎下腺手術
内視鏡下副鼻腔手術
鼻中隔矯正術
アデノイド切除術
扁桃摘出術
鼓室チューブ留置術など、いずれも県内で有数の症例数を誇ります。

外来について

耳鼻咽喉科・頭頸部外科全般をカバーしています。地域基幹病院という病院の性格上、精密検査・専門医療や入院が必要な患者さんを中心に診療を行っています。それ以外の患者さんに関しては、お近くの開業医の先生と連携して医療にあたるよう心掛けております。当科で行っている専門医療で代表的なものを以下に挙げます。

顔面神経麻痺診療

末梢性顔面神経麻痺(主にベル麻痺)は投薬治療により80%以上の患者さんが治癒しますが、それ以外の患者さんには後遺症を残します。当科ではまず患者さんが治りそうなのか、そうでないのかを早期に電気生理学的検査(ENoGなど)にて診断をします。後遺症を残しそうだと判断した場合は手術治療(顔面神経減荷術)をお勧めすることもあります。またリハビリテーションを指導して、より後遺症の残らない治療を目指しています。異常協調運動(眼を閉じると口が動くなど)などの後遺症が生じた場合、それを治療する方法としてボツリヌストキシン(ボトックス)療法も施行しております。

聴覚診療

聞こえが悪くて困っている全ての患者さんに対応できる体制で診療を行っております。当科の特徴は、聴覚診療のエキスパートである当科専属の言語聴覚士3名と耳鼻咽喉科医師が共同で診療を行っていることです。聴覚診療の専門外来(言語聴覚外来)では以下のような診療を行っています。

1.補聴器診療

当科の補聴器診療の特徴は、患者さんに実際に数社の補聴器を聞き比べてもらい、音質や性能・価格など自分の希望に合った納得のいく補聴器を選んでもらうというシステム(比較試聴システム)があることです。しかも最初の3ヶ月間は補聴器を貸し出しで行っておりますので、「補聴器は初めてでどんなものかよく分からない」「補聴器をいろいろ試してから購入したい」といった方にも気軽にご利用いただけます。補聴器は使用開始後の調整(フィッティング)がとても重要であり、これを欠かすと「補聴器はうるさいだけだ」ということになりかねません。当科では納得行くまで何回でもフィッティングを行いますので、いままで補聴器装用がうまくいかなかった患者さんの要望にもできるだけお応えできると思います。また、国内に流通しているすべての補聴器メーカーに対応出来る体制で診療をしております。ですので、他のお店や医療機関で補聴器を購入したけどうまく行かなかった方も諦めずに、お持ちの補聴器を持って診察を受けてみて下さい。補聴器適合検査(補聴器を装着した状態での聴力検査)や補聴器特性測定装置(補聴器の性能を客観的に把握するための装置)などの専門設備も整えており、患者さんにとって最適な補聴器活用に役立てております。

補聴器診療についての小冊子補聴器診療の詳細を知りたい方のために、当科で補聴器診療についての小冊子を作成いたしました。

興味のある方はご参照ください。補聴器診療についての小冊子ダウンロード

2.小児難聴診療

子どもの言語発達においては、「聞く」、「考える」、「話す」活動がとても重要です。ことばの入り口である「耳」の領域を担う当科では、難聴の診断から治療、そして補聴器や人工内耳による聴覚活用や言語発達の教育的指導まで、総合的な診療を行っています。近年は新生児聴覚スクリーニング検査(生まれたばかりのお子さんに対する聞こえの検査)の普及で、生後早期から難聴が発見されるようになりました。「難聴の疑い」や「難聴」と診断されたお子さんを今後どうして育てていったらよいか分からない、というご家族の方もいらっしゃると思います。そのような方は是非一度当科を受診してみてください。当科は、聴覚障害の教育機関である県立聾学校とも密に連携をとっていますので、医療面だけでなく教育面についても是非ご相談下さい。また手話のできる言語聴覚士もいますので、ろう者の方もお気軽にご来院下さい。 小児難聴の専門的な検査設備も全て備えております。新しい検査である聴性定常反応検査(ASSR)の設備もあり、これを用いてより正確に難聴の状態を評価し、補聴器のフィッティングに役立てております。

3.人工内耳診療

高度先進医療のひとつで、聴力が低下して聞こえなくなってしまった成人の患者さんや、生まれつき聞こえが悪くて補聴器をしても効果がない幼小児の患者さんに音を入れる治療です。子供から大人まで全ての年代の患者さんに対して、専用の器械を埋め込む手術から音を入れるトレーニングまで当科で対応しております。手術については、聞こえの神経に対する侵襲が少ないといわれている新しい器械(電極)を用いて、残っている聞こえの神経をなるべく温存する方法(聴力保存手術)を基本として行っております。また、人工内耳診療においては、手術後のトレーニングが極めて重要であり、その成果を左右します。手術後の人工内耳の調整(マッピングといいます)やトレーニングを徹底的に、なるべく頻回に通院していただいて行います。特にお子さんの人工内耳においてはその教育方法が大事だと言われており、当科では海外の人工内耳先進国で主に行われている聴覚音声法(Auditory-Verbal Therapy)を基本として行っております。