形成外科

レーザー治療

2024年度より、当院皮膚科・形成外科でレーザー機器を導入いたしました。
今回導入されたのは、Qスイッチ付きルビーレーザー(ザ・ルビーZ1 Nexus、JMEC社)、ロングパルス色素レーザー(VbeamⅡ、CANDELA社)です。
当科では、主に広範囲のあざ(保険診療)に対する治療を行います。
シミ取りなど、自由診療のレーザー治療については、皮膚科のHPなどをご参照ください。

ルビーレーザー

ルビーレーザーは主に青あざ(太田母斑、異所性蒙古斑)の治療に用いられます。茶あざ(扁平母斑)の治療も可能ですが、再発率が高いことを十分理解して行う必要があります。青あざ治療では、メラニンによく吸収される波長の光をあてることで、熱反応によるメラノサイトの破壊、メラノソームの排出を促し、あざを褪色させます。

太田母斑

太田母斑とは、まぶたやおでこ、頬、小鼻などにみられる青みがかったあざですが、茶色みが目立つこともあります。真皮メラノサイトの増生によるものとされています。生まれてすぐ、または赤ちゃんの時からみられる早発型と、思春期にはっきりしてくる遅発型とがあります。治療は3か月以上の間隔をあけて複数回(多くの場合は4-5回程度)行います。クリームの局所麻酔薬を用いますが、痛みが強い場合には注射の局所麻酔薬を併用します。

異所性蒙古斑

蒙古斑も太田母斑同様、真皮メラノサイトの増殖による病態とされます。通常の蒙古斑はお尻や背中に見られ、成長とともに(10歳くらいまでに)目立たなくなることがほとんどです。それに対して、異所性蒙古斑とは、その他の部位、たとえば手足やおなかなどに生じるもののことをいいます。異所性蒙古斑や色調の濃い蒙古斑は、成長しても残ってしまうことが多く、目立つことが予想される場合にはレーザー治療を行います。治療は3か月以上の間隔をあけて複数回行います。小範囲の場合にはクリームの局所麻酔薬を用いて行いますが、広範囲の場合には入院、全身麻酔が必要になることもあります。

写真 レーザ1 写真 レーザ2 写真 レーザ3
※筆者が他院で執刀した患者さまおよびご家族から承諾をいただいて写真を使用しています。本HP以外への無断転載はお断りします。

右腕の異所性蒙古斑のお子さんです。初診時、3回照射後、5回照射し初診より4年後です。この方はクリームの麻酔で治療を行いました。

扁平母斑

扁平母斑とは、平坦な茶あざのことで、体の様々な箇所に出現します。皮膚の浅い層にメラニン色素が増加することにより生じます。保険診療でのレーザー治療が可能ですが、いったん色調の消退をみても、徐々に元の色調に戻ってしまうことが多いのが特徴です。その点を十分ご理解いただいたうえで希望に応じて治療を行います。また、一度レーザー治療を行って治療抵抗性であった場合には、複数回の治療をお勧めすることはありません。

色素レーザー

色素レーザーは主に赤あざ(単純性血管腫)や乳児血管腫(イチゴ状血管腫)、毛細血管拡張症の治療に用いられます。血液に含まれる色素に吸収される波長の光をあてることで、毛細血管を熱凝固して消退させます。

単純性血管腫

単純性血管腫は、毛細血管奇形ともいわれる、生まれつきの赤あざです。皮膚の中の毛細血管が拡張していることにより、その中の血液の色で赤く見えます。比較的浅いタイプの方では色素レーザー治療によりかなり色調が肌色に近くなりますが、比較的深いタイプの方では、複数回の治療を重ねることで、徐々に色調を薄くして目立ちにくくすることが目標になります。

写真 レーザ4 写真 レーザ5 写真 レーザ6
※筆者が他院で執刀した患者さまおよびご家族から承諾をいただいて写真を使用しています。本HP以外への無断転載はお断りします。

初診時、初診より2年後、3年後です。この間、3-6か月に1回、治療を続けていただいています。まだ色調は残っていますが、通常のファンデーションで対応できるようになったとのことでした。

乳児血管腫

乳児血管腫は、イチゴ状血管腫ともよばれる、小児期特有の腫瘍性病変です。生まれてから数週間してから目立つことが多く、1歳くらいまではどんどん大きくなり、その後少しずつうすくしぼんでゆきます。6~10歳くらいまでに赤みは目立たなくなることが多いのですが、何もしないときずあとや皮膚のたるみが目立つことも多いため、ケースによっては赤ちゃんのうちに(ピークを迎える前に)治療を行います。近年ではプロプラノロールの内服治療が良く行われるようになりましたが、色素レーザー治療も早期の照射によりピークをおさえ、消退を早くすることが知られています。乳児血管腫に対するレーザー治療を行う場合、早期(赤ちゃんのうち)に治療を開始します。

レーザー治療の流れ

初回外来では、まずレーザー治療の日程調整を行います。形成外科での外来レーザー治療は基本的に火曜日水曜日の午後、予約状況を見て行います。特に扁平母斑など、効果が不確実なあざの治療を行う場合には、小範囲の試し打ちを行うことも可能です。また、全身麻酔を必要とするほどの広範囲のあざの治療は、入院していただいて木曜日または金曜日の午後に手術室で行います。

治療間隔

保険診療では、一連のレーザー治療の間隔を3か月以上とすることが決められています。ただし、治療後の色素沈着が目立つなど、皮膚の状態によっては4~6か月程度間隔をあけることもあります。

合併症

熱反応を生じるため、熱傷(やけど)や、それに伴う色素沈着、色素脱失などを生じることがあります。熱傷の程度がひどい場合、瘢痕を生じる可能性があります。そのため、初回は安全な出力から開始し、皮膚の状態を見ながら2回目、3回目と出力を強くしてゆきます(したがって、最初のうちはあまり効果が実感できないことがあります)。