形成外科

小耳症

小耳症とは、耳介の一部~大部分が生まれつき低形成であるため、小さくなっている状態のことをいいます。耳たぶとその上に小さな軟骨だけが残っているもの(耳垂型)、やや小さな耳甲介や耳珠が残り上方が小さくなっているもの(耳甲介型)など、変形の程度はいくつかのパターンに分けられます。

写真 小耳症1
耳垂型小耳症

写真 小耳症2
耳甲介型小耳症

5000~10000人に1人程度の頻度で、男性に多く右側に多いです。 多くの場合、耳の穴は塞がっているか細くなっており(外耳道閉鎖・外耳道狭窄)、伝音性難聴を伴います。片側小耳症では、反対側の聴力が正常であれば日常生活での支障はかなり少ないため、聴力改善のための治療は行わないことが多いですが、最近では軟骨伝導補聴器を試す方も増えてきています。両側小耳症の方では、早期に骨伝導補聴器を使用します。聴力改善のための外耳道形成術はリスクの割に長期経過や整容面のマイナスがあり、現在行われることはかなり少なくなっています。 したがって、治療は耳の形を再建するための手術が主体となります。ほかの耳の変形と異なり、耳の組織量が圧倒的に少ないため、赤ちゃんの頃に矯正治療を行うことはほとんどありません。

治療
手術治療

手術治療には、2回法(永田法、四ツ柳法など)、エキスパンダー法、人工物(メドポア)を用いた方法(日本では行われていません)などがあります。
当科では、2回法での手術を行います。
手術適齢期は肋軟骨が十分成長する10歳以降となります。成人すると肋軟骨が硬くなってくるため、10代のうちの手術が推奨されます。

第1回手術

肋軟骨を通常3本使用し、耳の形のフレームを作製して皮下のポケットに埋め込む手術です。余った肋軟骨は大きいものを傷のすぐ下に埋め込み第2回手術で使用します。 余った軟骨の小さなものは取ったところに戻し変形が最小限になるようにしています。
全身麻酔に加え、肋軟骨採取部の痛みを和らげるための硬膜外麻酔や持続ブロックなどを併用して行います。
2~4週間程度の入院を要します。
胸を4cm程度切開して肋軟骨を採取します。肋軟骨を耳の形に近くなるように細工してフレームを作製します。

第1回手術前後の写真
写真 小耳症3 写真 小耳症4

第1回手術の後は耳が埋まりこんで浮き出た状態になります(メガネやマスクはまだかかりません)。 第1回手術から2カ月程度でほとんどのスポーツは問題なく行えるようになります。

第2回手術

第1回手術から半年程度あけてから行います。
耳の輪郭に沿って切開、耳を立てる手術です。
第1回手術で皮下に埋めておいた軟骨をつっかえ棒として耳の後ろに移植して周りの筋膜でカバーし、腹部からの皮膚を移植します。 第1回手術に比べると痛みは少ないことが多く、入院期間は2週間程度としています。

第2回手術後6か月の写真
写真 小耳症5 写真 小耳症6 写真 小耳症7 写真 小耳症8
※筆者が他院で執刀した患者さまおよびご家族から承諾をいただいて写真を使用しています。本HP以外への無断転載はお断りします。

術後2か月くらいからマスクやメガネを許可しています。 ほとんどのスポーツは問題なく行えるようになりますが柔道やレスリングなど寝技の多い格闘技は原則禁止です。